必要としている人たちに支援の手を / 認定NPO法人 テラルネッサンス代表 小川真吾さん インタビュー

今回、maaaruプロジェクトを一緒に推進するカウンターパートナー、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの小川真吾さんへインタビューを行い、活動への思いなどについて伺いました。

テラルネッサンス 事業概要について

テラ・ルネッサンスさんは、どのような活動をしている団体なのでしょうか?

カンボジアの地雷問題への取り組みをきっかけに、2001年にスタートしました。アジアではカンボジアやラオス、アフリカではウガンダやコンゴ、ブルンジ、そして2022年3月からはウクライナへ活動の拠点を広げ、主に紛争被害者のサポートを行っています。

各国の情勢について

コンゴの現状について教えていただけますか?

コンゴは1990年代の終わりころから紛争が始まり、第2次世界大戦以降、最も多くの死者を出しました。わたしは16年前から現場で活動していますが、その間ずっと紛争が続いています。紛争によって命が奪われるというだけではなく、移動の自由が奪われたり、治安が悪くなったりする点も問題になります。食べ物や薬、安全な水が手に入らず栄養失調になると、マラリアなどの感染症で重症化するリスクも高まります。マラリアは適切に治療すれば治る感染症ですが、マラリアによって命を落とすのはアフリカの人々が多く、特にコンゴに集中しています。

コンゴの教育に関して言うと、大都市の学校はそれなりの補助を受けていますが、わたしたちが対象にしているのは、コンゴの中でも貧しい村の学校です。生徒が500人ほどいる学校でも、先生のお給料が払われなかったり、先生の教科書がなかったりする学校もあります。そんな状況の中で学校を運営していくためには、やはり最低限のお金が必要になってきます。わたしたちのようなNGOの援助が入り、都市部の初等教育の普及率はそこそこ高まってきていますが、中学へ進学する数はほとんどゼロに等しいという状況です。

ウガンダやブルンジも同じような状況なのでしょうか?

ウガンダの北部では、戦争で推計3万6000人の子どもたちが誘拐され兵士にされました。また、当時は人口の約9割が国内避難民キャンプで生活していました。今では復興が進んできて、教育に関しては、政府は初等教育の無償化を掲げていますが、蓋を開けてみると、北部では学費として保護者たちがお金を払わないと、学校を運営できない状況にあり、貧困層の子どもたちは学校に通えません。それに対し、南部の方では比較的初等教育が普及していて、コンゴに比べると、初等教育の就学率も90%を超えています。しかし、政府がそれなりの予算を出しているとはいえ、中学になると進学率は約20%になってしまい、村では学校に通えなかったり、通えてもドロップアウトを繰り返す子どもたちが多い状況です。

ブルンジは、1972年にジェノサイドがあったり、1990年代にも内戦が起こったりして、教育どころではないという状態でした。2005年以降は少し落ち着いてきましたが、2015年にはクーデター未遂があり、そこからまた混乱しつつあります。コンゴに比べれば、今は子どもたちが学校へ行く環境や制度はそれなりにしっかりしていますが、長年にわたる紛争の影響を受け、一人当たりGDPが世界最下位という状況です。

maaaruとの関わり

今回、maaaruとパートナー連携を結ぶに至った経緯をお聞かせください。

maaaru代表の村主さんから声をかけていただいて、maaaruプロジェクトについて知りました。アフリカは世界の中でも教育が進んでいない地域ですし、それが一因で貧困に陥っています。そして貧困だから、子どもを学校に通わせることができないというサイクルができあがっているのです。maaaruのプロジェクトは、わたしたちの現場においてとてもニーズがあるものなので、ウガンダとコンゴ、ブルンジそしてラオスの4カ国でぜひやらせてくださいということになりました。

maaaruとの連携で具体的にどのような支援をされるのでしょうか。

コンゴの東側は、レアメタルや金、石油が豊富にあることで知られていて、そのような背景から長く紛争が続き、学校や病院は破壊されています。昔作った校舎は、老朽化により雨漏りしていたり、竹でとりあえず支えていたりといった状態です。コンゴの中央は、最近の紛争で、300校以上の学校が焼かれ破壊されてしまいました。ですので、主な活動としては、壁を作り直したり、ドアをつけたり、屋根を修復したりといった学校の修繕を行っています。それらに加えて、机や椅子、黒板といった備品の整備も行っています。

発展途上国の子ども支援をして大変だったこと、嬉しかったことなどを教えてください。

紛争があった地域では、多くの家庭でお父さんが殺されています。そうした中で、子どもたちやお母さんたちだけで避難してきて、食べ物もなく餓死寸前で、もう学校どころではないという状況でした。そんな彼らにとって、学校とはある意味夢のような場所です。そもそも学校へ行く前に、生きるか死ぬかという状況ですし、今はコロナ禍やウクライナ危機の影響で、食料の価格もぐんと上がっています。学校の屋根が壊れているとか、制服がないとか、そういった状況ではあるものの、勉強できること自体がもう本当に夢のようだ、といったコメントをしてくれる子どもたちがたくさんいて、嬉しかったですね。

各国の人々はmaaaruに何を求めているのでしょうか?

まずは子どもたちが安心して勉強できる環境を作ることだと思います。トイレが崖のような場所に穴を掘っているだけの学校では、事故に遭うことも考えられますよね。単純に、雨を防ぐために校舎を修復するというだけではなくて、例えばドアに鍵をつけることで襲撃への不安が減るといったように、子どもたちがとにかく平和で安心して勉強できる環境作りが大切です。

国連や政府のプロジェクトでは、例えば、校舎をゼロから作るのであれば支援をするといったように、支援金の使途に制限があるものが多いです。現地のニーズは学校によってまちまちで、教科書や机、先生の人材育成など様々なものが必要です。maaaruではそのような現地の学校に寄り添った支援が実現できるので、本当にありがたいと思います。

社会をより良くしていくために

テラ・ルネッサンスさんが目指していく社会についてお聞かせください。

組織として目指しているのは、全ての生命が安心して生活できる社会の実現です。社会全体が平和になるためには、子どもたちだけではなく、動物も含めた自然環境も含まれると思います。

子どもたちの教育に関していえば、子どもが勉強できるようになるためには、やはり家族との関係性や家族の収入を安定させなければなりません。継続的に子どもたちが学校に通って勉強できる環境を作っていくことが大事なゴールですね。

最近ウェルビーイングという言葉をよく耳にしますが、ウェルビーイングとは、生きがいのある暮らしや生活だと解釈しています。単純に食べ物だけが満たされていれば幸せになるかといえば、そうではありません。一人一人が生きがいを感じること、つまり自分の存在意義や他者から必要とされている感覚、自尊心が大切になってきます。特にアフリカは西洋文化に対するコンプレックスを持っていたり、自分たちが遅れているという感覚を抱いていたりします。しかし、いくら大変な難民の方でも、その人たちにできることは必ずあります。わたしたちの仕事は、確かに「無いもの」探し(ニーズ調査)をしますが、そのプロセスにおいて、現地の方自身やその地域コミュニティなど、彼らの文化の中には本当にいろんな「在るもの」があります。あるものを活かすことで、彼らが抱えているネガティブな課題を、彼ら自身で解決できる環境を作っていくことを大事にしていきたいです。

maaaruが目指す「世界の教育格差の是正」には何が必要だとお考えでしょうか?

やはり知ることだと思います。世界の教育事情は、途上国の中でもとても格差があります。コンゴは収入でいうと1日1ドルに満たないような状態で生活している人がほとんどです。まずは多くの方がこういった格差があるということを認識しないと、格差を是正する力は働きません。わたしの元へは、大学の授業などへのオファーはありますが、このようなニッチな世界だけではなく、もっとたくさんの人に世界の現状を伝え広げていきたいです。

最後に日本の支援者の方へお願いなどあればお聞かせください。

世界で一番支援を必要としている人たちに、もっと目を向けてほしいという思いがあります。わたし自身、現場をずっと見てきているので、今のアフリカはあまり注目されていないように感じています。アフリカでの日本のNGOは本当に数えるほどしかありません。社会全体をバランスよく支援することももちろん大事だと思いますが、その格差を是正するという意味でも、ぜひアフリカにも目を向けて支援の拡大をお願いしたいと思います。

小川さんの熱い思いをお聞きし、胸を打たれました。より良い教育を提供できるように、今後も連携を深めていければと思います。本日はありがとうございました!

ニュース一覧へもどる