パスサバール女子高校
Pas Sabar Female High School
Pas Sabar, Pachir Agam
教育機関: 教育省
生徒数: 660 名
支援者: 木内 翔大
困っていること
本学校には現在教室として使用できる校舎が全くありません。上述のように、紛争中のパチェラガム郡は危険地帯とされていたため、現地政府関係者や支援団体が入域することもできず、学校建設が行われたことがなかったことが理由の一つです。そのため、授業は屋外での実施を余儀なくされ、プラスチックシートやカーペットを敷いた上に座って授業を受けています。この地域は山岳地帯にあるため、10月にもなると寒さが増し、屋外で授業を受けるには厳しい環境にありますが、子どもたちは寒さに耐えながら授業を受けています。しかしながら、11月からの本格的な冬の間は寒さが厳しく授業を継続するのが困難となる場合も多くあります。また雨天では授業は中止、夏の直射日光や地熱で体調を崩す生徒も後を絶たず、このような劣悪な状況で適切な教室が不足していることを理由に、学校に通うこと自体を諦めてしまう子どもも多くいます。 また、この地域では気温差が極端で、砂嵐なども起こるため、保護者らも屋外での授業に不安を覚え、子どもたちを学校に通わせたくないと考えている家庭もあり、多くの子どもたちの継続的な学習が実現していません。これは、教員のモチベーションにも影響しており、事前の調査でインタビューした教員たちは皆、自分の教え子が、教育環境が整っていないことで勉強を諦め、天気を理由に授業を中止せざるを得ず、子どもたちの明るい未来の芽を摘んでしまう現状を深く嘆いています。
現地の状況
ナンガルハル県でも特に険しい山岳地帯にあるパチェラガム郡は、1970年代のソ連侵攻から近年まで、国内でも最も紛争が激しかった地域の一つです。2019年ごろまではタリバンと「イスラム国(IS)」、政府軍、外国軍など様々な勢力間の紛争が続いていました。この紛争により、多くの男性が亡くなり女性のみが残された世帯や戦争孤児が増え、大きな怪我や障がいを負った脆弱性の高い人々も多く生活しています。2021年8月からはタリバンが国を制圧しているため、現在はこれまでの戦闘状況はなくなり、安全な地域に戻っています。地域の人々は今こそ子どもたちが安心して教育を受けられる環境を切望しています。なお、中学以上の女子教育を禁じているタリバン当局も、小学校の女子生徒が安全に学習できる環境の支援自体には同意しています。学びを継続できない女子たちは家から出られず、経済・食料危機等も相まって、女子たちの児童労働や早婚を助長しています。また、中学以上の女子教育が禁止されていることに対して、国際社会は抵抗の声を挙げていますが以前状況は変わらないままです。本事業では女子校ないしは共学校でも女子生徒が多く在籍する学校に焦点を当て、対象校を選定しました。また、パチェラガム郡では、女性教員の数も不足しており、女子生徒及び女性教員への支援を実施することは社会的にも大きな意義があります。 今回設置するのは仮設教室用テントですが、本来であれば丈夫な建物内に教室を設置することが望ましく、ひいては同国の女子教育の再開を含む長期的な課題解決を模索する必要があります。紛争や政変の大きな波に巻き込まれ、不安定な生活や教育環境の下で生きてきた子どもたちが、よりよい環境で学びの機会を得ることは、本来誰もが持つべき権利であり、子どもたちの健全な成長に必要不可欠であると考えます。私たちは「教室がない」という理由で学習が妨げられている子どもたちにとって喫緊のニーズに応えるべく、本事業を実現させたいと考えています。
活動報告